音楽と社会フォーラムのブログ

政治経済学・経済史学会の常設専門部会「音楽と社会フォーラム」の公式ブログです。

ロンドン大学歴史学研究所音楽史セミナー特別企画参加報告

竹内敬子さんから大変興味深い情報をお寄せいただきました。まことにありがとうございます!

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こんにちは。
成蹊大学文学部竹内敬子です。現在、ロンドン大学キングズカレッジで学外研修中です。2011年5月9日(金)、ロンドン大学歴史学研究所(Institute of Historical Research)の社会史セミナー「音楽史」の一環の特別企画に参加してきました。

Street Music: 200 Years of Musical Enterprise and Achievement in Regent Street, 1813-2013

後援:the Royal Philharmonic Society

プログラムは以下

Welcome & Introductions by Leanne Langley
John Nash and the Building of Regent Street by Geoffrey Tyack
The RPS Library by Arthur Seals (都合により欠席。代読)
The King’s Theatre/ Her Majesty’s and Operatic Rivalry by Daniel Snowman
Players, Promotion & the Geography of Chamber Music by Christina Bashford
Round Table: Music Publishers, Agents, Instrument Dealers by Lewis Foreman and Simon McVeigh
Audience & Orchestral Transitions: Argyll Rooms, St James’s Hall, Queen’s Hall by Leanne Langley
The Significance of Broadcasting House, 1932 -2012 by Mark Hines
The RPS in Context by John Gilhooly
The Round Table & General Discussion (司会David Wright)

現在は、高級店が並ぶ「ショッピング」を連想させるリージェント街は、実は、かつては音楽と密接に結びついた空間でした。「1本の通り」という限られた空間が、音楽との関係でダイナミックに描き出された興味深い企画でした。各報告は、①音楽をロンドンの歴史に位置づける、②音楽のプロフェッション化、③音楽がハイリスクな産業であること、という3点を意識してなされました。

参加者は70名ほどでしょうか? この種の催しに、音楽団体の後援がある、という開催の形式も今後の日本での「音楽と社会」の歴史研究を進めて行く上で参考になるかもしれません。また、この企画は、the Royal Philharmonic Societyの設立200周年を睨んでのもので、音楽団体を歴史家が後援しているという側面もあります。

発表者も音楽史家ばかりでなく、BBCの職員やthe Royal Philharmonic Societyの職員、アーカイブの司書などが含まれていました。参加者は、音楽史家と音楽家が混ざっているようで、ティータイムに何人かの人から「あなたは音楽家なの?」と話しかけられました。私に話しかけてくれた人たちは、音楽と音楽史を両方やっていたり、どちらか一方だったり・・・でした。

ベートーヴェンメンデルスゾーンが、頻繁にリージェント街で作品を披露したり指揮したりしていたのだというのが、臨場感を持って感じられて興奮しました。が、同時に、「クラッシック音楽」と呼ばれる分野で、ベートーヴェンが同時代人にもったほどの人気をもって演奏される作曲家がほとんどいないのはなぜだろうと思ったりもしました。

「ストリートミュージック」というタイトルは、リージェント街に引っ掛けてしゃれたつもりだと思いますが、ちょっとミスリーディングで、ペーパーはクラッシック音楽にほとんど限定されたものでした。実際にリージェント街に沢山いたというつじ音楽家などについては、ほとんど言及なしだったし、ポップミュージックや庶民の聞く音楽と「クラッシック」の聴衆との関係の数も含めた変遷なども知りたかったところ。

みなさまのご参考になれば幸いです。

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みなさまも何か情報などございましたら、お気軽に事務局までお知らせいただければ幸いです!