音楽と社会フォーラムのブログ

政治経済学・経済史学会の常設専門部会「音楽と社会フォーラム」の公式ブログです。

音楽をとどけるメディアの変遷について考えたこと

 時流に乗ろうと思い、Black Fridayだから何か買おうと考えたのだが、結局洗剤や靴下など日用品しか思いつかず、悲しくなっている筆者です。そんな今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

 

 筆者のゼミナールに所属する学生の中には音楽にかかわる諸問題を卒業論文のテーマにする者も少なくありません。勿論テーマは、音楽フェスのこと、アイドルのことなどきわめて多様なのですが、先日、音楽メディア(記録媒体)の変遷についての報告を聞きました。

 

 中年の筆者にとっては、やはりレコードからCDへの移行(変化)がとにかく大きな位置を占めております。その後、CDも売れなくなり、MP3などのデータが中心となった、というような極めて雑な認識しか持ち合わせていませんでした。

 

 ところが詳細な報告を聞いていると、その間にも短い期間のみ盛んに用いられたミニディスク(筆者はほとんど使った記憶がありません)等のことをはじめ、データ音源にしてもダウンロードからサブスクへの動きとか、PCなどからMP3プレーヤーへの転送がなかなか難しかった時期の話などを聞きました。そうしたなか、知らないことがあまりに多いこと、なによりいまだに「レコード→CD」のことを大きく考えている自分の「無知」を痛感いたしました。

 

 何か学生たちが知らなさそうなことはないか、と考え、カセットテープの話をしました。録音していろいろ個人で編集してそれが楽しみであったこと、旅行に行くときはそれを数多く持ち運ぶのが大変だったことなどの個人的な体験にはじまり、80年代のアメリカでは音楽をカーオーディオで聞く場合が多かったこともあり、アーティストの作品がレコードと並ぶほどカセットで多く発売(発表)されていたこと、演歌は近年まで(も)カセットで多くの作品が発売されていたことなどの(産業の)状況についてなどを懸命に話しました。が、学生たちの反応は薄く、興味を引くことはなかったようです(涙)。

 

 メディアの変遷についての議論の中で、どこかの記述でアナログレコードの時代は女性や若者(子供)があまりそれを購入しなかったという話が出てきました。ある学生がその理由を報告者に尋ねたところ、報告者はよくわからないがと前置きしたうえで、自分の予想としては、CDよりアナログレコードが高価であったからではないかと答えました。

 

 その際、筆者は、個人的な体験をふまえ、レコードは30cm四方の大きなものでかさばり、購入後買い物や食事に行く際に荷物になることが(通販が少ない時代に購入を躊躇させる)一因ではと述べました。CDはカバンなどに入るし、便利な世の中になったと感じたものだよ、とも伝えたのですが、学生たちはあまり実感がわかなかったようです…(筆者のゼミはいつもこんな感じです…)

 

 ただ、そんなことより重要と思ったのは、学生たちがアナログレコードの方がCDより高価だと認識していることです!確かにレアですが、現在もそうなのでしょうか。筆者が高校生のころ、1980年代の半ばには、同じ内容のアルバムがアナログレコード2500円、CD3200円という時期が間違いなくあったんだ、と叫びそうになりましたが、やめておきました…

 

 今後も学生たちと議論しながら学びつつ、多くの知らないことを教えてもらおうと考えた一日でした。

セミナーのご案内

急に寒い日々が続き、体がとてもついていけそうもない今日この頃、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

今回は、井上貴子さんより届きました、セミナーのご案内を紹介させていただきます。

 

「Gender and Music」と名付けられたセミナーが開催されます!

 

井上さんは3月にご報告を行うことになっております!

 

まずは以下に掲載したチラシをご参照ください!

 


どなたでも無料で参加できるとのこと!

 

みなさま、ぜひふるってご参加いただければと思います。

 

音楽と社会フォーラム事務局

10月23日開催の政治経済学・経済史学会秋季学術大会においてフォーラムの会合を行います!

ようやく涼しい日が増えてきました今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

 

今回は、10月23日開催の政治経済学・経済史学会秋季学術大会における本フォーラムの会合についてお知らせいたします。

下記をご参照ください。

 

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音楽と社会フォーラム 会合のご案内

 

10月に開催される本年度の政治経済学・経済史学会秋季学術大会に合わせて、
音楽と社会フォーラムの成果出版についての会合を行います。
主な議題は、12月に計画している座談会についてです。
みなさまのご参集をお待ちしております。

日時:2022年10月23日日曜日 午後12:30~
会場:法政大学多摩キャンパス経済学部棟2階214教室
 会場へのアクセス等の詳細は、以下をクリックしていただき、政経史学会秋季学術大会の案内をご覧ください。
 

seikeishi.com

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なお、参加方法、参加登録、プログラムなどについては、ここを参照ください。

 

みなさま、ふるってご参加いただければと思います。

 

音楽と社会フォーラム事務局

 

2022年の夏における「声出し」について

 涼しい日も多くなってきまして、いささか過ごしやすくなったと感じる今日この頃です。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

 先日、2022年の夏の甲子園大会が終了しましたが、今年は観客の入場制限がないかたちで開催されたようです。きっと球児のみなさんやご家族をはじめとした関係者のみなさんにとって、とても良い経験、思い出深い経験になったことが想像されます。いち観戦者としても、大いなる盛り上がりを強く感じることができました。

 

 いよいよコロナの影響も少なくなってきたのか、と安直に思ったのですが、現在も多くの自治体において、大人数の観客が集まるイベントでは、大声を出しての応援、声援等(以下、「声出し」)は原則的に制限されております。ただし、そうしたイベントでも入場者数等を5000人以下、あるいは会場の収容率を50%以下に制限した場合は、「声出し」が可能となるようです。詳しくは各自治体の㏋等をご覧いただければと思います*1。甲子園大会の場合は、関係者のお気持ちを想像した場合、人数制限するよりも「声出し」を制限する方を選択するのは当然かもしれません。

 

 また、応援団のブラスバンドの人数も制限があったようです*2。他にもホイッスルなど使用が制限されている楽器もあるとの話でした。ブラスバンドのみなさんにとっても甲子園は晴れ舞台の一つであるとのこと。近年はよりその傾向が強いとうかがっていますので、応援の演奏をされるみなさんにとっても、上記のような制限がなくなる日が待ち遠しいのではないでしょうか。

 

 こうした状況は、例えばプロ野球*3やJリーグなどの多くの観客が大人数を集まるプロスポーツも同様のようです。試合会場で声を出して応援することを好まれる方々にとってはフラストレーションがたまる場合もあるかと思いますが、昨年、一昨年のことを想起しますと、まずは入場者の制限なく様々なイベントが開催されることを、個人的には嬉しく思っている次第です。

 

 

 さて、夏の定番であった音楽フェスについては、報道などでご存じのように、今年は多くの会場で行われているようです。ファンにとっては、待望の夏、という感じかと思います。やはり野外で生の演奏に触れること、堪能することは、格別ですよね。

 

 ただ、こうした音楽フェスにおいても「声出し」の制限がなされている場合が多いと聞いています。もちろんスポーツの応援もそうなのですが、音楽フェスで声を出さないというのは、何と言いますか…。筆者自身、ライブで声を出さない、歌わないという経験が全くありませんので、どのような感じなのか、想像もつきません。

 

 もちろん多くの人が集まる場ですから、さまざまな考えを持った方々がおられるのは当然と思います。そうした中、皆が楽しく感じ、良い思い出を作ることがなによりですので、致し方ないとも言えますが。音楽フェスも、興行面を考慮すれば、人数制限よりも「声出し」制限を選択する場合が多いであろうと考える次第です。

 

 日常生活においては、徐々にマスクを外す機会が多くなってきました。音楽の楽しみ方も早くコロナ前のかたちに戻ることを願ってやみません。声を出す、歌うことは大変心地よいことと考えますし。ただ、今や音楽産業の重要な柱である、音楽フェスが大々的に行われたこの夏を、まずは喜びたいと思っている今日この頃です。

 

 

*1:例えば、神奈川県については下記をご参照ください。https://www.pref.kanagawa.jp/docs/j8g/callcenter.html

*2:蛇足ですが、ブラスバンドが演奏する曲の多様さと同時に、その選曲の「なつかしさ」にも驚かされました。例えば、「宇宙戦艦ヤマト」や「ルパン三世」、「タッチ」等、筆者が若いころに聞いた曲は定番のようですし、筆者も大好きなバンド、スペクトラムの「サンライズ」もよく聞きました!高校生のみなさんはよくご存じですね。ちなみに現在放送中の大河ドラマ「鎌倉殿…」の主題歌をブラスアレンジで演奏している高校もありました!早い!

*3:これまた蛇足ですが、先日テレビであるプロ野球中継を見ていましたら、応援歌のようなものを歌うなど、声を出しての応援が聞こえてきました。いよいよ制限が解除されたのか、と思いきや、録音したものを流しているとのこと。球団もいろいろ盛り上げる方法を考えているなあ、と妙に感心してしまいました。

暑い夏とカラオケ

 というタイトルですが、朝がた大雨に見舞われ、ずぶぬれになった筆者です。そんな今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 

 昨晩、本当に本当に久しぶりに、ゼミ生に誘われるままにカラオケに行ってまいりました。

 

 カラオケが国民的なレジャーとして普及しつつあった頃、10代であった筆者は、最近カラオケ産業における大手の業者の不調も聞いているし、勝手に今この業界はどうなのか?などと思っていましたが、大学生の皆には現在も定番の娯楽、飲み会の後に行く場合が多い、そのダントツの第一候補だと聞きました。

 

 事実、昨晩お邪魔したお店は、しっかりした設備を備え、サービスも充実しており、些かの驚きを感じました。筆者が若いころは、ロードサイドの空き地にコンテナを改造しただけの「荒っぽい」カラオケ店が多くありましたが(そうした粗製乱造が多くみられたほどビジネスチャンスが広がっていた時期だったと思われますが)、全くその頃の印象とは異なりました。みなさまは、そんなの当たり前、そんなことも知らなかったのか、と思われるかもしれません。すいません。全く「今」のことに疎くお恥ずかしい限りです。

 

 そして何よりびっくりしたのが、大学生の歌のうまいこと!キーを自分に合わせ変えていることもありますが、ビブラートを多用する歌唱に圧倒されてしまいました。しかも参加した全員がそうでした!!場数を踏んでいるのか、歌うことが当たり前なのか…筆者も歌うことが好きで些か自信もあったのですが、気後れしてしまい、そして、何より彼らの歌いたい!という意欲の前に自分が歌うことを控えざるを得ませんでした。あと、人前で歌うことに対する恥ずかしさのようなものを、彼らからほとんど感じられない点についても、時代の移り変わりを痛感せずにはいられませんでした(このことについても、そんなことも知らないのかといわれそうですが…)。

 

 ただし、ゼミ生たちが気をつかってくれたのか、筆者のような中年でも知っている80-90年代の歌謡曲、ポップスや古いアニソンなどを選択していただき、お酒が進んでいたこともありますが、何かわくわくするようなラジオ番組をずっと聞いているような心地よさがありました。素晴らしき「DJ」でした!

 

 そんなこともあり、これまた本当に、本当に久しぶりに徹夜、オールを経験しました…午後まで起きられなくて年甲斐もなく恥ずかしい、と反省しております(こたえます…)…ただ、あまり味わったことのない「楽しさ」を提供してくれたゼミ生に本当に感謝したいと思います!!

 

ゼミ生による報告に刺激を受けて

 すっかり蒸し暑くなってきました今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。マスクがきついです…とくに坂道をのぼる際…

 

 先日、自分が担当するゼミナールにおいて、4年生による卒業論文の中間報告を行いました。経済学部なのですが、筆者が本フォーラムの事務局を担当していることもあり、筆者のゼミは、音楽について、あるいは音楽と経済の関係について、深く学びたい、語り合いたいとする学生たちとの触れ合いの場にもなっています。

 

 筆者のゼミに所属する、ある学生の卒業論文は、日本における音楽業界、音楽産業の現状をテーマとするものでした。多くのことに目配りができている内容であり、まず感心したのですが、個人的にとくに興味を抱いたのが、オンラインを通じて行われる(有料の)ライブの話でした。

 

 オンラインでのライブ(の普及)は、コロナの影響の副産物といえるかもしれませんが、さまざまな理由(面倒だ、交通費および移動の時間がかかる等)でライブに足を運ぶことを躊躇していたみなさんには好都合のかたちなのかもしれない。まずこうした感想を持ちました。他方でコンピューターなどを通じた画像越しのライブが、現場で実際に体験するものと、どうしても差があるのでは、とも考えました。

 

 ただ、音楽を送り届ける側であるアーティストにとっては、(多くの)会場を借りなくてもよい、全国を回る必要が必ずしもない等、とりわけコストの面で好都合の点が(多く)あるともいえます。さらに学生からは、オンラインならではの演出もあるとの話を聞き、なるほどとうなづくことばかりでした。

 

 年齢を重ねた身としては、時間の経過に伴う音楽の楽しみかたのかたちの変遷を実感せずにはいられません。何よりそれを痛感した報告でした。気づきを与えてくれた報告を提供してくれたゼミ生に、まずは感謝したいと思います。そして、今後、音楽の楽しみかたのかたちはどうなるのだろう、と、全く意味のなさそうな思いを抱いたことも、ともあれ記しておきたい思います。

 

 前回と同様、あくまで中年男の独り言とお考えいただければ幸いでございます。

 

 

アナログレコードの「復活」の動きと個人的な思い

 蒸し暑くなってきました今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 

 アナログレコード(vinyl record)の天敵の一つである、カビの季節が近づいたともいえますが。

 

 中年の筆者にとっては、アナログレコードこそが最重要の「音源」であり、音楽に触れる手段でありました。盤面に指紋がつかないように(ついた箇所にカビが出てきますので)ジャケット(および中袋 *日本ではビニール、アメリカでは紙が多かったように思います)からレコード盤を取り出し、ターンテーブルにそっとのせて、針を落とす。こうした「繊細」な手続きを経てはじめて、音楽に出会うことができました。今考えると、ガサツな筆者にとっては面倒ではありましたが、不得手なこのデリケートな作業を進めているとき、いつも本当にわくわくしたことを記憶しております。

 

 ただ、筆者所有のアナログレコードは、現在では必ずしも頑丈とはいえない実家にとっての「重荷」としての面ばかりが際立つようになっております。ここ数年、アナログレコードに針を落とした記憶がありません。

 

 この人は突然何をいっているのか、とお思いかもしれませんが、(かつて)あれほど愛したアナログレコードのことをふと考えるきっかけとなった、興味深い記事を紹介いたします。

 

「復活を遂げたアナログレコード 一体どんな人が買っているのか? 米国の新しい調査結果発表」

復活を遂げたアナログレコード 一体どんな人が買っているのか? 米国の新しい調査結果発表 - amass

 

 主にアメリカにおけるアナログレコード市場を分析したこの記事を筆者なりに解釈しますと、若い方々も購入することが多く、その数は昨年に比しても大幅に増加しております。筆者などは新品よりも中古が好きだったのですが、新品(発売していること自体が筆者には驚きですが)を購入される方も多いとのことです。しかもその多くはアナログレコードの「良さ」を理解しており(例えば、「本物」感、音の「温かみ」等)、継続して購入される場合が多いようです。

 

 上記の状況については、サブスクあるいはネットを媒介してで音楽を聴くことが普通となったこの時代にどうして?とも思ったのですが、やはりアナログレコードを音楽を聴く手段というよりも、(例えば音楽自体はデジタルを通じて聴き)レコードをモノとして所有したい、集めたいという意識で購入される方も多いとのことです。私自身もこれと共通する思いを持ち合わせておりましたので、妙に納得してしまいました。

 

 筆者は10代のころに、アナログレコードからCDへの「移行」に直面しましたが、当時から後者に比して前者の音質が優れているとされていました。ただ、筆者は安物のオーディオ機材しか所有しておらず、音質も違いはよくわからなかったことを記憶しています。前出の記事によれば、アナログレコードの購入者の少なくない数の方々がオーディオ機材のアップグレードを考えているとあります。なるほど!、こうした「新たな」市場の開拓、「経済効果」もあるのか、と単純に思いました。もっとも筆者はCDの台頭の際、アナログレコードの問題点の一つの「プチプチ音」(この表現が適切かわかりませんが)がないこと、また持ち運びが容易なことに感動しましたが。例えば、夜に友人などと会う約束をした日でも、かさばらないので気楽にショップに出かけ購入することにある意味での楽しさを感じたこと覚えています。

 

 と、さまざまな私的な思い(出)を綴らせていただいたのですが、その過程で、日本でも、とりわけ2000年代に入ってみられたアナログレコードの復活・復権の動きにほとんどかかわりのなかった自分がいることを再確認しました。一時期は、今後レコード針が入手できるのか、と真剣に気をもんだ時期もあったのですが、それから、かなりの時間が経過したようです…ともあれ、アナログレコードをこよなく愛した者としては喜ばしい昨今の状況であり、いつか筆者もこのムーブメントに参加したいと考えてはおります。

 

 乱文失礼しました。