ちょっとしたメタル話 番外編 ちょっとしたコンサート話 その1 宇宙の彼方へ
いよいよ「師走」直前の今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
今回は「メタル話」番外編として、ちょっとしたコンサート話(参加記)(その1)を記してみようと思います。番外編ですので、少しフィクションも入っておりますが、お気軽にお読みいただければ幸いです。
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10月某日、久しぶりのロックのコンサートに胸をはずませつつも、不安を少しおぼえながら、一人の中年男が仕事に疲れた足を引きずり、久しぶりに日本武道館に向かっておりました。彼はマイナーなロックを愛好しているらしく、武道館は1980年代半ばのJudas 〇riestのライブ以来のようです。この日、武道館でライブを行うアーティストは、ボストン(Boston)です!
40代以上のロックファンなら多くの方が知っているこの「大物」アーティストの来日は、1979年(男は当時まだ小学生)の初来日公演以降長きにわたり実現しておらず(まさに“Long Time”〔1st収録、2枚目のシングル〕ですが)、まさにまだみぬ「最後の大物」といってよい存在でした。近年めったにロックのコンサートに出かけない男も、このバンドだけは死ぬまでに一度は見ておきたい、との思いで重い腰をあげたようです。
1976年のファーストアルバム「幻想飛行(Boston)」は全世界で1700万枚以上を売り上げ、1978年のセカンドアルバム「ドント・ルック・バック(Don't Look Back)」は全米ナンバーワンを獲得しました。こうしたことからわかるように、ボストンは、重厚かつ果てしなく伸びやかなツインリードギターと練りに練られたメロディ、幾重にも構築されたコーラスワークなどを主たる武器に、アメリカン・ロック(プログレ・ハード)のファンのみならず、多くの人々を魅了してきたことは疑いありません。全ての楽曲を手がけるリーダーのトム・ショルツ(Tom Scholz)は、マサチューセッツ工科大学(MIT)出身の(インテリ)ミュージシャンとして、同時に一音も無駄にしない「完璧主義者」としても知られる存在でした。
ただ、オリジナルメンバーはすでにこのトムのみで、しかも彼はかなりお年をめされている(1947年生。ライブ中両膝にサポーターのようなものをされていました)今回の2014年の来日です。期待よりも(これまでのイメージが壊れてしまうのではという)不安の方が大きかったことは事実です。人生初の最前列(だが端っこ)に陣取った男は、まず観客の平均年齢の高さに納得し、かつ九段下駅から途切れなく続く予想を遥かに超える観客数の多さに些かの驚きと嬉しさを感じつつ、そのときをまちました。
結論から書きましょう。本当に「完璧」でした。当然のように“Rock & Roll Band”から始まったライブは、メンバーがトム以外全く違うのに音がレコード(not CD)から流れているような感覚をおぼえるほど、「揺らぎ」を感じないものでした。こんなのはロックじゃない。そんな感情さえわきでてくるほどのミスの少なさです。しかし次第にその「世界」に引き込まれていく自分がいました。そして武道館は、“More Than A Feeling(宇宙の彼方へ)”の手拍子で一体となりました。皆、若い頃を思い出したのでしょうか。また、若い人はどのように感じたのでしょうか。我を忘れて10代の頃に帰った気分を味わい、ただただ満足した夜でした。帰りの電車では、ロックとは何か、こうしたことを考えながらも、またコンサートに行きたい、という思いが、とにかく強くなりました。
男がボストンをはじめて聞いたのは、セカンドアルバム発表後の長いインターバルに入っていた時期でした(「8年に1枚」とよく揶揄されました)。だが、全くの後追いですが、1st,2ndの音をラジオで耳にするとすぐに夢中になり、即座に中古レコードを入手し聞きまくりました。そんな中、突如サードアルバム「サード・ステージ(Third Stage)」(1986年)が発表され歓喜し、全米でも大きな反響をよんだことを今でも鮮明に覚えています。音楽は時を越えるものなのでしょうか。そんなことを考えさせてくれるボストンの来日公演でした。やはりライブっていい。再確認しました。
追伸:コンサートではステージのバックに大きなスクリーンがあり、さまざまな映像が流れるのですが、MC(しゃべり)の際、その日本語訳が映画の字幕のように流れるのには驚きましたし、(多くのお客様も同様でしたが)少し笑ってしまいました。しゃべっていることも(ジョークも含め)「完璧」に(間違いなく)伝えたかったのでしょう。やはりトムは、間違いなく「完璧主義者」でした(笑)。