音楽と社会フォーラムのブログ

政治経済学・経済史学会の常設専門部会「音楽と社会フォーラム」の公式ブログです。

ちょっとしたメタル話 その2―日本のメロディとへヴィメタル―

 寒い日々が続いております今日のこのごろ、いかがお過ごしでしょうか。今回は、音楽をめぐる雑談として「ちょっとしたメタル話」をさせていただこうと思います。好評(?)をいただきました前回よりおよそ10ヶ月ぶり、2回目となります!
 以前の研究会でもお話しましたが、へヴィメタルという音楽にとって日本のマーケットは非常に重要な位置を占めます。その生誕以来、勿論変動はありましたが、一貫して一定の人気を保ってきましたし、欧米の状況に左右されない独自の「シーン」を築いてきました。それゆえか、特に欧州のアーティストは日本についての楽曲を少なからず世に送り出してきました。他方で、極東の国に何らかの激しさを感じたのかもしれませんが、SAMURAI(という曲も複数存在), SHOGUN, GEISHA, NINJA, BANZAI, TOKYO BLADE 等々、とりわけ1980年代前半、些かの誤解に基づく形で日本語がメタルバンドの名として選択される場合もみられました。ただし、日本で生み出された楽曲、メロディを採用したへヴィ・メタル/ハードロックとなると、かなり限られてくるように思います。以下、思いつくままに幾つか紹介しましょう。
 まず、なんといっても有名なのは、ドイツの代表的なバンド、SCORPIONSの日本でのライブ盤「Tokyo Tapes」(1978)収録の“Kojo no Tsuki(荒城の月)”でしょう。また日本でも人気の高かったメロディックバンド、FAIR WARNINGの、これまた日本でのライブ盤「Live in Japan」(1993)収録の“Sukiyaki(上を向いて歩こう)”(あのKISSもライブで演奏したことがありますし、もっとも多く外国でカバーされた日本の楽曲かもしれません)。いずれも日本語の発音も大変お上手であり、あらためてそのメロディの素晴らしさとアーティストの日本への思いを感じさせます。ただし、いずれも日本におけるライブで披露されたものです。プログレッシブロックの代表的なバンドの一つ、YES(といいますかヴォーカルのJon Anderson)も日本でのライブで“Tonbo no Megane”や“Zo-San”を披露していますので、来日公演でのご挨拶あるいは敬意の表明という意味合いが強いのかもしれません。では、スタジオ録音で日本のメロディが取り上げられたケースはないのか。
 私が思いついたのは、1990年代に日本を中心に高い人気を誇った北欧メタルバンド、ROYAL HUNTのヴォーカルを中心に結成され、ドイツを拠点に4枚の作品を残したSILENT FORCEの3枚目の作品「Worlds Apart」(2004)のオープニングナンバー“Ride The Storm”です。タイトルからはいったいどんな曲が取り上げられているのか、わからないかと思います。イントロです。どこかで聞いたような?…♪“あかりをつけましょ ぼんぼりに お花をあげましょ 桃の花 五人ばやしの 笛太鼓 今日はたのしい…”  
…多くの方々がご存知のはずの、あのメロディが大変重厚な演奏で迫ってきます(歌はなし)。そして何事もなかったかのように良質なメロディックパワーメタルへと進んでいきます。なぜこうなったのか。現時点では不明ですが、少なくとも彼らが日本で生み出されたそのメロディを気に入ったことだけは疑いないかと思います。是非一聴をお勧めいたします(時節柄、丁度良いかと思いますし)。ちなみに本作では、パワーメタルの中にベートーベン(第9)やオフェンバック(天国と地獄)のメロディもちりばめられており、そうしたことを好むバンドなのかもしれません。
 また、上記のようなケースとは別個に考えるべきかもしれませんが、近年は日本のメタルバンドの楽曲を外国のメタルバンドがカバーするという現象もみられます。いずれにしても、へヴィ・メタルと日本という国の関係は、今後多様な切り口から検討していく必要があると思います。

 今回は雑談に終始してしまいましたが、メタルに限らず日本のメロディと外国のアーティストの関連については勿論、またフォーラムが取り組むべき他のテーマについて、皆様からご意見、情報をお寄せいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。