音楽と社会フォーラムのブログ

政治経済学・経済史学会の常設専門部会「音楽と社会フォーラム」の公式ブログです。

第20回研究会の内容をご紹介します!

 非常に早い梅雨明けと共に猛暑がやってきた横浜です。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 今回は、東京大学本郷キャンパスにおいて、2018年5月12日(土)14時より行われた第20回研究会の内容を、一部ご紹介します。

 本研究会は、今年の10月20日(土)・21日(日)に一橋大学で開催される、政治経済学・経済史学会(政経史学会)秋季学術大会おけるパネル・ディスカッションの準備研究会でした。

 2本の報告が行われましたが、河村徳士さん(城西大学経済学部)の「音楽をとりあげる政治経済学的意義―日本経済史の可能性を中心に―」は、上記のパネル・ディスカッションの中心に位置するご報告ですので、その内容は、秋(の大会)のお楽しみ、ということにさせていただきます。

 その前座として行われた枡田大知彦さん(専修大学)の「「ジャーマン・メタル」とは何か―その「誕生」と商業的「成功」―」も、上記パネル・ディスカッションに関係している報告でした。それゆえ、内容の紹介はごく簡単なものにさせていただきます。

 参加者のみなさま、まことにありがとうございました。



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「ジャーマン・メタル」とは何か―その「誕生」と商業的「成功」―

                         枡田大知彦

 本報告でいう「ジャーマン・メタル」とは、ドイツ産のヘヴィ・メタル全般を指すのではなく、1980年代半ばから1990年代の初頭にかけて、一つのムーブメントを起こした、メロディック・パワーメタルのことを指す。「ジャーマン・メタル」は、ドイツで生み出された音楽だが、当初より日本のレコード市場において絶大な人気を誇った。日本における商業的な「成功」は、イギリスを中心としたヨーロッパ、後には南米に飛び火することになったが、最大の規模の音楽市場を有するアメリカにおいては、「ジャーマン・メタル」が人気を得ることはほとんどなかったといってよい。本報告では、「ジャーマン・メタル」の中心に位置するバンド、HELLOWEEN(ハロウィン)およびそのフォロワーを中心的な対象として、「ジャーマン・メタル」の起源(その先駆者を含む)、盛衰およびその「行く末」を検討した。こうした検討をふまえて、実際に10曲ほど「ジャーマン・メタル」の楽曲を聴きつつ、その音楽性の特徴を明示したうえで、世界の市場を見渡した限りでは「異常」ともいえる日本での人気の理由、そしてアメリカでの「不人気」の理由を考察した。

 大学の共同研究室においてヘヴィ・メタルを聴くという頻繁にはみられないであろう状況・空間ではあったが、フロアからは活発な質問および批判が投げかけられた。とりわけ「ジャーマン・メタル」とクラシック、あるいは英米のロックとの関係について、より深く、興味深い議論が展開したと思われる。